定常型社会 新しい「豊かさ」の構想 広井良典 著 はじめに 「不安」の原因は「成長」・「拡大」に替わる目標がみえない →  ↓ 定常型社会へ ・少子高齢化  ・環境親和型社会 定常型社会は資本主義と相容れないか 第1章 現代の社会をどうとらえるか −環境・福祉・経済−   経済成長と所得配分の平等化 1.基本的枠組み   ↑ ケインズ政策・福祉国家・経済成長   ↓  日本の場合は公共事業 「環境−福祉−経済」の関係   家族や共同体の外部化→市場(福祉)国家が生成 図T-1 環境親和型社会と高齢化社会   図T-2 行き着く先は定常型社会 2.二つの対立軸−−−富の成長と分配 成長志向vs環境志向 ↑ 社会保障をめぐる対立軸と環境をめぐる対立軸    ↓   大きい政府vs小さい政府 現実の政策展開の中での二つの対立軸―ヨーロッパ   大きい政府(社民)-環境派 小さい政府(保守)-成長派   しかし福祉国家→「経済成長と分配の平等」を目指す。    日本は「再配分政策を通じた成長」はなく「パイの拡大のみ」 二つの対立軸の全体像 図T-3   今までは成長志向の対立軸→環境志向との対立軸加わる 新しい状況―対立軸の接近とクロス ↓ 保守・社民の相違の縮小そして成長vs環境軸も縮小 「環境-福祉-経済」の認識・議論開始 「比較福祉・環境政策」という視点 表T-1 日本の場合 対立軸が認識されていなかった→「パイの拡大」が目標 第2章 個人の生活保障はどうあるべきか ←「富の再配分」を新しい視点から描く −ライフサイクルと社会保障− 1.「インフォーマルな社会保障」 日本の社会保障の特徴―規模・内容・財源に関して   規模→低い インフォーマルな社会保障があったため   内容→年金の比重が大きい(基礎年金不十分)失業・子供対策が低い   財源→税(相当な額)と保険の渾然一体性→複雑 日本の社会保障の評価―日本の社会保障給付費はなぜ低いのか   「失業」-子ども・対人社会サービス・生活保護・医療が低い  インフォーマルな社会保障―二つのコミュニティーとその解体   「カイシャ」と「核家族」の解体→個人基本単位の保障 雇用の流動化と社会保障をめぐる新たな論点@   「カイシャ」に関する  終身雇用・製造業モデル→SOHO等多様化     保険料徴収困難     退職者を職域からはなした医療制度が必要     職域と地域という二本立て構造が困難 子供に対する給付の低さと「子育て社会化」 ー社会保障をめぐる新たな論点A   社会保障における給付シェアが低い    児童手当の創設が遅い→産業化の初期 子どもは生産財とみなす    子育ては核家族の中で母親によって行われる        特に三世代同居が多くのこる 2.これからの社会保障  →縦割りではなく全体将来像が必要 医療・福祉重点型の社会保障 →「税と保険」役割分担明確化 図U-1   公的給付の削減は間違い(市場は失敗がおこりやすい)   基礎年金は厚めに税で 所得比例部分はスリム化 個人のライフサイクルを座標とする社会保障  →現在は高齢者中心   高齢者・子どもについては税中心 現役世代は保険 図U-2 「人間の三世代モデル」とその現代的変容   大人:働(産) 子供:遊・学  老人:遊・教 「被保険者ー被扶養者」という構造の変容   被扶養者としての老人の比重拡大→税による社会保障必要   子育ての社会化→独立した給付や保障が必要   女性の「被扶養者」としての独立 「二つのU字カーブ論」ー「従属人口割合」と女性の就業率   女性の社会進出が保障されることにより働く者の割合が均衡保つ   生涯現役→隠居やボランティアも価値ある生き方 社会保障の財源をめぐる課題―消費税、相続税、環境税(この順番)   消費税は累進的 社会保障財源としての相続税   介護と相続:相続税→「共通のスタートライン」「フローとストック」 環境税との関係ー社会保障政策と環境政策の統合   「ストック」まで視野が広げる→環境税 第3章 福祉の充実は環境と両立するか −個人の自由と環境政策− 1.機会の平等と潜在的自由    「個人の機会の平等」という主題→各人は同じスタートラインにたちえるか 近代的な「個人」とその平等の揺らぎ →機会の均衡を確保する対応を    @相続に関する資産格差  (・・・・強調)    A遺伝的個人の情報に対して               (1)反差別CPG(2)社会保障システム支援 機会の平等と潜在的自由   潜在的自由とは→選択肢の広さの確保   社会保障とは自由の実現のためにある制度 cf.セン 潜在能力 「共通のスタートライン」と「セーフティ・ネット」の意味   生まれた状態で様々な条件を背負う 実現の制度   「共通のスタートライン」                  =将来に向けたそして過去に遡ったセーフティーネット 諸外国の社会保障政策の動向との関係   子供時代早期支援 若者の労働市場参入支援 社会的排除の除去 浮上する新たな二つの問題   個人の自由vs「資源・環境面制約」                     個人の自由が究極的価値原理となるか   持続可能な福祉国家は可能か→定常型社会 内的な問題   生全体に意味付けを与える根源的な価値が必要 2.社会保障と環境政策の統合 社会保障政策と環境政策 (1)国の政策レベル   社会保障財源としての環境税 例 炭素税    ヨーロッパで行われている 企業の社会保障負担の軽減   エコロジカル税制改革と社会保障   企業は環境負荷を通して人々の健康状態やQOLを損なっている (↓環境)   「フローからストックへの課税」     自然資源を追いすぎ労働力を使わない             失業率上昇             エネルギー消費促進 (2)地域レベル  (サステイナブルコミュニティーへ)   地域におけるコミュニティーと自然  図V-1 現状は「カイシャ」と「核家族」→「環境(自然)-福祉(コミュニティー)-経済」が一体化へ    地域の再登場→老人と子どもの土着性           雇用の流動化 サラリーマンと自営業の連続       情報化(どこでも仕事ができる)   地域通貨の試み  金融機能(信用機能)なし   自然とのかかわりを通じたケア   ―臨床レベルにおける「福祉と環境」のクロス    自然との関わりを高齢者ケアにいれる              定年帰農→望ましい老いの姿 (3)地球レベル    (↑地球レベルの環境問題へ繋がる パイの大きさ→環境)   地球レベルの社会保障/福祉国家 パイの再配分→社会保障)    構造基金を通じた「再配分政策」              ジェンダーの平等に対する規制の共通化など    今まで社会保障はドメスティック(国内)制度だった   「高齢化の地球的進行」と定常型社会   (↓人口定常化→収束点ー破局をむかえないために) 2030年持続可能な均衡 人口80億人(高齢化進行)・子ども2人 ・一人当たり350ドル 先進国は少子高齢化対策 途上国は人口爆発対策 ・汚染排出 土地浸食 資源利用制限技                         術導入 第4章 新たな「豊かさ」の形を求めて 1.「成長」という価値−経済システムの進化 表W-1 古典派―市場経済と自然 ・私利の肯定→市場の共同体的制約から離陸 定常状態というコンセプトー「成長」に終わりはあるか ミル自然的制約 新古典派−産業化と自然的制約からの離陸   必要から需要  価値から効用     自然的要素による価格決定→需要と供給による決定 ケインズ以降の時代−「情報の消費と貨幣」   「モノの消費」→「情報の消費」 需要が経済の決定要因になっていく マネー化−究極の主観性そして不確実 → 美人投票(流動性選好)   貨幣が取引ないし投機の対象   情報化 マネー化 → 主観的 → 無限に拡大・成長 「成長」概念と経済学のパラダイム   成長に価値があるのは失業問題に関して    成長に価値があるという原理的根拠付けなし 2.定常型社会−時間観の転換 離陸とその反転   三重の離陸  200〜300年間ひとつの方向へ一貫した歩み 本質的な問題はなにか   外的な限界-地球の有限性    内的な限界-需要(欲望)の量的拡大成長に成熟化飽和点がある   分配-地球レベルの社会保障 定常型社会とは 持続可能な福祉国家/社会   マテリアル消費が一定な社会 しかし経済成長 環境効率性が高い 量的拡大→質的変化に価値がおかれる 資源生産性が高い   変化しないものに価値がおかれる 時間という要素   単位時間当たりの何かを極大化させる    成長率がさがる→生きていくスピードをちょっと緩める 時間の消費−時間観の転換@  マテリアルを消費する→情報の消費→時間の消費 /tが意味ない 根源的な時間の発見ー時間の転換A   市場/経済の時間と別の流れ方をする→自然の時間 図W-2 定常的社会または持続可能な福祉国家/福祉社会  表W-2 個人の生活保障がしっかりとなされつつ環境・資源制約の               中で長期にわたって存続しうる経済システム 3.新しいコミュニティー−定常型社会における個人と公共性 定常型社会におけるセーフティーネットの意味   十分なセーフティーネットが伴ってはじめて個人の自由が実現され           る社会 定常型社会と分権型社会   ・・・・参照   成長推進力が機能しなければ自ずと社会の分権化と分散化を導く 「新しいコミュニティー」と個人・公共性  図W-3 図W-4    営利と非営利の連続化―‐定常型社会と市場/貨幣経済   NPOは収益性・マネージメントで営利企業に近い 図W-5 政治/政党に求められるもの   政策 自助・共助・公助